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すべての手順に意味がある。どんな作品も安全に運ぶ、美術品輸送の山田さんの仕事を追う!【動画】

2022.07.29

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今回の動画

実は宅急便よりも長い!60年以上の歴史を持つヤマト運輸の美術品輸送

絵画、彫刻、化石、剥製、楽器、図書など、さまざまな貴重な作品を取り扱い、梱包から輸送、展示などを行っています

今回は、国内で展覧会が行われる場合の美術品輸送の工程を紹介しながら、中部美術品支店 山田晃彰さんの業務の工夫や想いに迫ります

 

 ※2022年8月号(冊子)の「ヤマトは我なり」に載せきれなかった内容をお伝えします!

 

中部美術品支店 グループ長 美術品梱包輸送技能取得士1級

山田 晃彰(やまだ てるあき)さん

美術品輸送の大まかな流れ(展覧会の場合)

1)展覧会の主催者さまからご相談を受ける

2)輸送計画をたてる

3)作品の下見・輸送のシミュレーションを行う

4)作品を入れる木箱をつくる

5)作品を集荷、梱包する

6)展示会場まで輸送する

7)展示作業を行う

8)作品の撤去、輸送、返却を行う

 

安全に運ぶため、事前準備とシミュレーションを徹底

展覧会開催にあたって、輸送が必要な展示作品が決まったら、まずは所蔵されている場所に下見に向かいます

 

作品のサイズや、運搬経路などの採寸、輸送の段取りなどもあらかじめ確認

運ぶ作品によっては複数回下見を行い、梱包と輸送のシミュレーションを行います

山田さん

早いときには、半年~3ヵ月前に下見を行い、準備を始めます。

ヤマト運輸の各地の美術品支店では、地域の美術館や博物館のお客さまと信頼関係があるため、いち早く情報をいただけることが多いです。

作品を守る木箱・木枠をオーダーメイドで製作(製函)

下見を終えたら、輸送の際に実際に作品をおさめる木箱を製作します。(※作品によっては、木箱での梱包が必要ない場合もあります)

 

木箱の中に、数種類の断熱材や緩衝材をミルフィーユ状に入れ、作品を湿度・温度変化や衝撃から守ります。

木箱は、作品の大きさや形に合わせたフルオーダーメイド

仏像や彫刻などヒト型の作品を運ぶ際には、木箱の他に、作品を固定する専用の木枠も製作します。

仕上げに色を塗ります。

山田さん

製作した業者や所有者さまによって使う色が違うことで、受け取る人がどの荷物を受け取るのか、見分けやすくなっているんですよ

山田さんの仕事道具①

山田さんが10年以上前から続けている、木箱の設計図ノート。

輸送を担当した作品と製作した木箱の、採寸結果と設計図が、詳しく記録されています

同じ作品の輸送を何度も担当することも多いため、過去の記録を残しておくことで、お客さまに素早く見積りを出すことができ、製作もスムーズに行えます

作品の集荷へ。梱包の現場は臨機応変に

木箱の製作が終わったら、作品の所有者さまの元へ集荷にうかがいます

 

美術館輸送では、梱包作業は必ず2人以上のチームで行います。

複数人のスタッフが目を配り、危険な箇所やヒヤリハットを共有チームで協力して安全を確保しながら梱包作業を進めます

 

山田さん

スタッフのスタンダードな美術品の梱包一つにも技量が現れますし、絵画を包むのか焼き物を包むのか、作品によって梱包の方法は違います。また、後工程で作品を開封する人が分かりやすいような設計にすることも大切です。

梱包ひとつとっても「何ためにその梱包をするのか」、すべての手順にちゃんと意味があるのです。

事前に下見を行って現場に臨むものの、本番で想定外の事態が発生し、予定していた手順を変えざるをえなくなることもあります

 

山田さん

例えば、製作した木箱に作品が入らなかったり、下見ではわからなかった傷や修復の跡などが見つかったり。梱包の現場では常に柔軟な対応が必要です

だからこそ美術品を扱うときは、常に一呼吸を置きながら、緊張感をもって作業を行うことが大切です。

さまざまな角度から作品を観察し、臨機応変に、そして前向きに「どうやったら安全に運べるか」作戦を考えます

焼き物の梱包の様子

ヤマトの美術品輸送独自の梱包「ヤマト結び」
紐の結び方ひとつにも美術品輸送業者の特色があります。

山田さんの仕事道具②

山田さんが持っているのは、「薄葉紙」という梱包資材。

作品の素材などに合わせて梱包資材もまったく変わります。

揺れの少ない専用車両で輸送

陸輸送で使われるのは美術品輸送専用の車両

展覧会の主催者さまや学芸員さんが輸送に同行されることが多いため、運転席の後ろに座席があるのが特徴です。

 

荷台の中は「定温・定湿」に保たれていて、輸送時の揺れが少なく、作品に衝撃を与えにくい設計になっています

運転席の後ろに座席があるのは美術品輸送専用車両だけ!

安全に、より魅力的に作品を輝かせる展示

作品を展示する会場に輸送が完了したら、いよいよ作品を展示します

長い巻物はガラスの棒、焼き物など立体のものはテグスなど、作品によって展示の手法は異なります。

お客さまの「こう見せたい」というご要望もしっかりと伺ったうえで、より作品が魅力的に映る方法を検討します。とはいえ、最も重要なのは展示の安全性。プロとして安全かつ魅力的な展示をご提案しています。

山田さん

輸送はもちろん、展覧会を完成させるまでが私たちの仕事です

作品の所有者さまがいて、開催される展覧会があって、それを見に来てくださるお客ささまがいるから、美術品輸送という仕事があるのだと思います

その方たちのために、どんなに難しい、プレッシャーの大きい仕事にも、尻込みするわけにはいきません。

こうやって裏方の仕事を取り上げて頂いたり、お褒めの言葉をいただいたりできるのは、私の行動を見てくれる仲間やお客さまの存在があるからです。

今も昔もこれからも、まだまだ道半ばという気持ちを忘れず、日々の仕事を通じて、常に成長していきたいです

山田さんってどんな人?上司の皆さんに聞いてみました!

中部美術品支店

マネージャー

美術品梱包輸送技能取得士1級

庄野大(しょうの まさる)さん

 

庄野さん

山田さんにしかできない細かい気配りや繊細な仕事は、お客さまからも非常に高い信頼を得ています。向上心が高く、周りの人のやる気を引き出すのも上手なので、今後もリーダーとして支店を引っ張っていってもらいたいです

ヤマト運輸株式会社

グローバル戦略推進部 美術品ロジスティクスチーム 

マネージャー

山屋 勝洋(やまや かつひろ)さん

山屋さん

山田さんは美術品取扱の技能員として、若い頃から常に熱い向上心をもって、自身が現場で最高のパフォーマンスを披露できるよう努力を積み重ねてきました

大型の仏像や重量のある彫刻など、難易度が高い取扱技術が求められる現場にも臆することなく挑戦し続けてきたので、今、多くのお客様から支持をいただいています。

ヤマトが誇る最高の技能員として、これからも日本文化の発展に貢献できる人材として活躍を続けて欲しいです

初めてOneヤマトで展示作業を実施@あいちトリエンナーレ

愛知県で2010年から3年ごとに開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」。4回目となる国際芸術祭「あいち2022」は7月30日から開催されます。その展示作業を担っているのが、中部美術品支店。

 

このような大規模な展示イベントを実施する際は、1つの美術品支店だけで対応することが難しく、全国の美術品支店などから応援に来てもらっていました。しかし、今回はOneヤマト体制のもと、初めて中部地域統括や三河主管支店のスタッフ、営業所の社員など計26名が参加。7月4日から29日の期間で、無事に展示作業を行うことができました。これをきっかけに、美術品事業の業務内容を知っていただき、今後さらなる業務の連携を図っていきます!

写真は、応援で参加された三河主管支店 豊田元町センター 戸田光星さん

 

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