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地域や社員をつなぎ、誰もが働く喜びを持てる環境づくりを推進【佐賀主管支店】

2023.09.20

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”誰一人取り残さない”社会の実現を目指して、各主管支店の人事・総務担当を中心に障がい者雇用の推進と誰もが働きやすい職場づくりを進めています。

 

今回紹介する佐賀主管支店は、地域の関連機関と積極的に連携するともに、誰もが働きやすく意欲的に働ける職場づくりに取り組んでいます。人事・総務担当の宮園さんと、障がいのある社員3名が働く伊万里営業所の吉田所長にお話を聞きました。

人事・総務担当

障がい者雇用推進者

宮園彩季さん

伊万里営業所

所長

吉田伸一さん

関連機関との連携

宮園さんが2020年に障がい者雇用推進者になり、最初に着手したのは、地域の特別支援学校や障がいのある方の就労を支援する機関との連携です。

 

支援機関のイベントに参加し、参加者に声を掛ける

情報収集のため、地域の支援機関の会議やイベントに参加してみましたが、最初は知り合いが一人もいませんでした。周囲では支援機関のスタッフや他社の人事担当者が、「お久しぶりです。この前は○○さんの就職先を紹介してくれてありがとうございました!」などとにぎやかに声を掛け合っていました。これを見た宮園さんは、色々な機関の担当者とつながりを作ろうと決意。「イベントに参加し、自分から参加者に声をかける。声を掛けようか迷ったら、必ず掛ける」と決めて実行しました

 

効果を実感し始めたのは、半年ほど経ってから。複数地域のハローワークの担当者間で「ヤマトの宮園さんが就職希望者を探しているよ」と情報共有をしてくれたり、「以前、作業の人材を募集していましたよね?」などと問い合わせをいただいたりするようになりました。

 

ヤマトで働くメリットや、雇用への想い、現場のニーズを伝える

支援センターや特別支援学校に電話して訪問する、「飛び込み営業」もしました。先方と話す際には、「障がいのある方と一緒に働きたい」という想いを伝えると共に、ヤマト運輸には事業所が多数あり、自宅近くで働ける点をアピールしました。佐賀県には、車やバイクでないと通勤できない立地の企業が多く、障がいのある方にとって通勤手段が就職のネックになっていると知ったからです。

 

また、お願いしたい業務を具体的に伝えられるように、事前に調査しておくことも有効でした。営業所の所長を対象にアンケートを取り、「現在人手が不足している業務は何か」、「どんな業務をしてもらえたら助かるか」を自由に挙げてもらいました。「障がいのある方にその業務ができそうかどうか」という先入観はいったん取り払い、純粋に人手が必要な業務を切り出してもらうようにしました。営業所のニーズを把握しておくことにより、宮園さんは、支援センターや特別支援学校と話す際に具体的に話を進めることができました。

 

 

営業所の受け入れ環境づくり

障がいのある方が実際に入社するにあたっては、職場の設備や仕組みを見直すことが必要です。伊万里営業所の例を紹介します。

 

設備や導線を見直す

伊万里営業所では、車椅子を使用する社員が入社した際に、車椅子で行き来できるスペースの確保や、ドアの形状の変更、作業台の高さの見直しなどを行いました。吉田所長や副所長が「やりやすい環境や道具があれば、遠慮なく教えてほしい。○○はやりづらいですか?」のように本人の希望を聞いたり、ジョブコーチ(障がいのある方が職場で働きやすいように支援する専門家)にも助言をもらいながら環境を整備。入社時だけでなく、働きながらお互いに気づいたことを共有し、見直していくことも大切です。

 

白いテープで導線を明示し、車いすで動きやすいように周囲を整頓

手作りの木枠で作業台の高さを調整

業務の運用や掲示物を見直す

知的障がいのある社員が入社した際には、構内のボックスの運用や貼り札の記載内容も改善しました。以前は、当日配達の荷物と翌日以降の配達分を分けずに同じボックスに入れていましたが、ボックスを分けて保管し、貼り札をつけて明確に表示しました。また、貼り札には、お届け先の住所を細かい番地まで記載することにしました。

 

現在の貼り札

誰にとっても働きやすい環境に

設備や掲示物などの見直しはもともと障がいのある社員のための取り組みでしたが、「伊万里営業所で働く全ての社員の働きやすさにつながっている」と吉田所長は言います。「私たち皆に、車椅子が通りやすいように構内や事務所を整頓する習慣がつき、誰にとってもより安全で快適な職場環境になりました。荷物を仕分ける貼り札は、新人や作業応援に来た人にとってもわかりやすく作業しやすいものになりました」。

 

本人の挑戦意欲をサポート

佐賀主管支店では、障がいのある社員の「チャレンジしたい!」という気持ちを尊重し、スキルアップを手助けするように心掛けています。伊万里営業所の成守さんの事例を紹介します。

 

【クローズアップ社員】

成守 太陽さん
入社年:2022年
仕事内容:荷物の仕分け・空ボックス整理・情報入力など
障がい種別:知的障がい

 

成守さんは、営業所構内の仕分け業務を担当しています。フォークリフトの免許を持っていないので、ボックスを動かす時には吉田所長や副所長に声を掛けて、作業してもらっていました。ただ二人とも忙しい時は作業ができず、成守さんは手待ちになってしまうこともありました。そんな時、成守さんから「フォークリフトの免許を取得し、自分で運転できたら、作業を早く終えられる。運転できるようになり、所長や副所長を助けたい」という提案がありました。

 

構内で仕分けをする成守さん

 

成守さんのフォークリフト免許取得について、吉田所長はこう話します。「事故のリスクを考慮し、営業所内や主管支店で色々な意見が出ましたが、成守さんの親御さんや特別支援学校の先生などとも相談した上で、免許を取得してもらうことにしました。事故のリスクがあるからこそ、しっかり勉強、練習して免許を取得し、安全意識を高めてもらうことが大事だと考えます。本人にとっても、チャレンジすることが働くモチベーションにつながります。だから応援したかったのです」。8月、成守さんは無事に免許を取得しました。

 

障がいの有無に関わらず、社員の誰もが成長や働きがいを実感できるよう、本人の意欲を尊重してサポートしているのです。

 

伊万里営業所の皆さん

【コラム】母校での進路講話

2022年10月には、宮園さんと伊万里営業所のメンバーで成守さんの母校を訪問し、生徒さん向けの「進路講話」を実施しました。吉田所長が業務の説明や質疑に対応し、荷物の仕分け体験の場などを提供。成守さんが、業務内容や自分の仕事に対する向き合い方、社会人として必要なこと、在学中にやっておけばよかったことなどを卒業生として話しました。生徒さんたちにヤマト運輸の仕事に興味を持ってもらい、実際に4月に1名が入社しました。

 

進路講話の様子。左から、成守さん、吉田所長

今後の展望

宮園さん

障がいの有無に関わらず、みんなが働く喜びを感じることができて、働きやすい環境づくりが大事だと思います。社員同士が「一緒に働けてよかった」と言い合えるよう、良い取り組みや雰囲気を広げていくのが私の役目です。佐賀主管支店の業務改善ミーティングでは、障がい者雇用に関する世の中やヤマト運輸の現状や、特別支援学校の生徒さんがどのように社会に出る準備をしているかなどを所長に共有しています。佐賀主管支店全体で同じ方向を向いて進んで行けるよう、これからも一生懸命頑張ります!

 

 

吉田所長

「障がいのある社員も定年まで働き続けられる職場にしたい」。成守さんの入社がきっかけで、この思いがより強くなりました。成守さんの入社が決まった時、親御さんが涙を流して喜んでくださった姿をはっきりと覚えています。障がいのある方にとっては、就職するのがそれほど難しいことだと知りました。「障がいのある方々が働き続けられる環境を作ることが、世の中の役に立つのだ」と痛感し、小倉昌男さんの思想に深く共感した瞬間でもありました。この思いを胸に、これからも障がいのある方の活躍を後押ししていきたいです。

 

宮園さんの想いに迫る「ヤマトは我なり」記事はこちら

(YAMATO NEWS 2023年9月号)

 

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