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事前準備やコミュニケーションの工夫で、みんなが気持ちよく働ける職場に【姫路主管支店】

2023.08.16

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”誰一人取り残さない”社会の実現を目指して、各主管支店の人事・総務担当が中心となり、障がい者雇用の推進誰もが働きやすい職場づくりを進めています。

 

今回紹介する姫路主管支店では、人事担当と営業所が職場実習を積極的に受け入れ入念な準備で臨む個人に合ったコミュニケーション方法を模索するなど、さまざまな取り組みをしています。

障がいのある社員がいきいきと活躍できる職場づくりや、今後の展望について、沼田さんと石田さんにお聞きしました。

人事・総務担当

マネージャー 沼田裕志さん(写真右)
障がい者雇用推進者 石田かおりさん(写真左)

石田さんは2021年に障がい者雇用推進者に就任しました。沼田さんは営業所の所長だった頃から石田さんとタッグを組み、障がいのある社員が活躍できる職場づくりに取り組んできました。現在は主管支店管下で、32名の障がいのある社員が働いています。

採用活動の工夫

関連機関に素直に頼り、協力してもらう

石田さんが障がい者雇用推進者になったばかりの頃は、障がいのある方を雇用したいと考えても、どうすればいいかわかりませんでした。そこで、特別支援学校や自立センターなど、地域の関連機関と連携しようと考えました。

関連機関に連絡をしたり、関連機関から問合せをいただいた際には丁寧な対応を心掛けることで、担当者との信頼関係を築きました

「日々の対応をとにかく丁寧に行うことから始めました。するとその方から『こういう人がいるよ』と新たにご紹介いただくなど、ネットワークが広がっていきました」。


また、石田さんの素直に頼る・協力を仰ぐ姿勢も功を奏しました。

例えば、関連機関からいただいた問い合わせ内容が難しく、うまく答えられない場合は、「担当になったばかりで、よくわからないんです。よろしければ、教えていただけないでしょうか?」と恥ずかしがらずに積極的に質問するようにしました。

 

すると、ほとんどの方がとても親身になって、詳しく教えてくれたり、相談にのってくれたりしました。こうして、協力してくれる関連機関や担当者が増えていきました。

 

 

職場実習には、入念な事前準備を

関連機関との関係が深まってくると、障がいのある方の雇用につながるやりとりや依頼が増えてきました。中でも姫路主管支店で多いのは、特別支援学校から生徒さんの「職場実習」の受け入れ依頼をいただくことです。職場実習を経て、両者がマッチングすれば、卒業後の入社につながります。

 

そこで、石田さんが徹底しているのは実習の事前準備です。

 

「まず受け入れ先となる営業所を決め、所長に連絡します。会社が障がい者雇用に取り組む意義を丁寧に説明した後、所長が不安に思っていることを聞いて、解消していきます。また、所長は実習前に生徒さんと保護者と面談をするので、その際に所長が使う資料や想定Q&Aなども、一緒に作成します」と石田さん。

 

生徒さんにどの業務を任せればいいか不安のある所長には、補助ツールを提案します。これは、営業所内の業務を細かく分けて可視化できる一覧表(※)。受け入れる生徒さんに合わせてそこからいくつかを選び、実習中の業務とします。「このツールは、関西統括の会議で滋賀主管支店の方が紹介していたんです。『すごくいいアイデアだ!』と感じたので、姫路主管支店でも使わせてもらっています」

 

所長が行う、生徒さんと保護者の方との事前面談には、石田さんも同席。この時、石田さんは生徒さんだけでなく、保護者の方にもしっかりと話を聞くようにしています

「例えば、『不安な点はありませんか』という質問を生徒さんにしたら、保護者の方にも意見を聞きます。本人が気づいていない点や、うまく言葉にできない点を補ってもらえることがあるからです。本人が『ありません』とおっしゃっても、保護者の方が『何個も指示が重なると、対応するのが難しいようです』などと教えてくださったりします」と石田さんは言います。

 

こうした石田さんのサポートの結果、実習を終えた所長からは「思っていたよりスムーズにできた」という声が多く挙がっています。

 

(※)滋賀主管支店が作成したこのツールはこちらからダウンロードできます※社内用のパソコンからのみ開けます

 

 

営業所での、障がいのある社員とのコミュニケーション実践例

実習を終え、生徒さんと営業所の希望がマッチングすれば、卒業後に入社して働いていただくことになります。

 

「障がいのある社員に長く勤めてもらうには、営業所のみんなが気持ちよく働けるようにすることがとても大切です」と沼田さんは話します。

特別支援学校出身の山本翔真さんは、加古川営業所で実習を行いました。営業所の仕事と環境に馴染み、2022年4月に入社。今は同僚からとても頼りにされています。


山本さんの実習・入社当時の所長が、沼田さんでした。沼田さんに当時のお話を聞きました。

加古川営業所

山本 翔真(しょうま)さん


担当:宅急便の仕分け、クール仕分け機材の準備、構内のボックス整理、発送作業、清掃など
障がい種別:知的障がい

様子を見ながら仕事を任せ、ノートも活用

実習期間中、山本さんは熱心に業務に取り組み、都度メモを取ったり、「なぜこのように仕分けるんですか?」と作業の意味を質問する姿がありました。沼田さんは、「常に見ていなくても、作業を任せられることを確認できました。手が空いたら、他の業務も頼むように心がけました」と話します。同僚からも「大変テキパキと働いてくれるので助かる」「卒業後はぜひうちに来てほしい」との声が挙がりました。

 

仕分けをする山本さん

特別支援学校が用意した「実習ノート」も活用しました。毎日の実習内容の記録と本人の感想や反省、営業所からのフィードバック、保護者からのコメントが書けるようになっているノートです。沼田さんは、「山本さんが家でポロッと口にした不安や心配事などを、親御さんが連絡帳に書いて教えてくれました。本人が直接言いにくいことや、私がその場で気がつかなかったことなどを、連絡帳を通して知れるのはとても助かりました」と話します。

 

人によって合うコミュニケーション方法は違う

加古川営業所のメンバーは山本さんの様子を見ながら、頻繁に話しかけるなどの積極的なコミュニケーションを取るようにしました。山本さんにはその環境が合っていたようで、スムーズに職場に溶け込みました。

 

「しかし、全ての人が同じ方法でうまくいくわけではない」と沼田さんは言います。「実習に来た別の生徒さんに同じように接した際には、それが本人には負担になっていたようでした。一人ひとりとちゃんと向き合い、その人にあった方法でコミュニケーションをとることがとても重要だと気づきました」と沼田さんは語ります。

 

 

コミュ二ケーションを補助する「苦手解消シート」

最近、人事担当が考案し、管下の事業所で活用しているのが「苦手解消シート」です。

障がいのある社員に、自身が苦手だと思うことと、自分なりの解消法を書き、それぞれの項目ごとに「どのくらい苦手か」を数値で表してもらいます。これを元に、所属長や同僚の社員は本人の気持ちを知り、「解消法」を参考にしながら対応します。

 

「一緒に仕事をしていれば、何が苦手なのか、ある程度は把握できます。しかし、一見問題なく作業はできているけれど、実は辛く感じているといった、心の中までを理解するのは困難です。このシートのおかげで、本人の気持ちを知ることができます。また、自分で解消法も書いてもらうので、本人の意思を尊重しながら対応できるようになりました」と沼田さんは言います。

 

シートは何枚でも書いてOK。一人で6枚書いた方もいるそうです。
書かれたシートは所長が回収して確認し、人事・総務担当と共有します。

 

石田さんは、「使ってくださっている営業所の皆さんの反応は、非常に良いです。『〇〇さんはこんな風に思ってたんだ!と新たな気づきがあった』『苦手だけでなく、得意なことを書く欄もあるといいのでは?』といった声が寄せられています。ただ、自分の気持ちがうまく書けない方もいらっしゃいます。その場合の対応を模索中です」と話します。

実際の記入例

 

皆さんの職場でもぜひご活用ください。 「私の苦手解消シート」 ダウンロードはこちらから ※社内用のパソコンからのみ開けます

最新の取り組みと今後の展望

最新の取り組み:41名参加の会社見学会を開催!

姫路主管支店では6月8日に、特別支援学校の高校1年生を対象にした会社見学会を開催しました。山本さんの母校の41名を招待し、主管支店とベースを案内しました。

 

「何をお見せしたら喜んでもらえるか? 大人数でも危険なく回れるか? などを考え、プログラムを練りました。 結果、少人数に分けて見学してもらうことに。誘導スタッフとして他部署の方にもたくさんご協力いただきました」と石田さん。

当日はまず、宅急便の仕組みを動画で紹介。その後、社員が会社について説明しました。飽きないようにクイズ形式にしたところ、生徒さんが熱心に質問に答えてくれるなど、大盛り上がり!
最後に、山本さんが生徒さんたちの前で先輩社員として話をしました。

 

石田さんが山本さんに「人前で話すのが苦手だったはずなのに、どうして引き受けてくれたの?」と聞くと、山本さんは「苦手なことこそチャレンジして、前に進むチャンスにしようと思いますと答えました。「その考え方にとても感動しました。特別支援学校の先生方にも、山本さんの成長した姿を見ていただけて嬉しかったです。見学会は、時間配分などに反省点もあります。改善し、今後も続けていきたいです」と石田さんは話します。

 

後輩の生徒さんたちに向かって話す山本さん

山本さん

毎日、ドライバーさんに声をかけられることが多いですが、いつも助かるよって言ってくれます。自分は苦手なことが多いですが、挑戦して克服できたことがたくさんあります。これからも苦手なことに挑戦していきたいです

 

加古川営業所の皆さん

今後の展望

 

沼田さん

もし職場実習の間だけうまく取り繕って対応できたとしても、障がいのある方にとって良い環境になるとは思えません。採用はゴールではなく、障がいのある社員がずっと長く働けて、成長できる職場をつくることが私のミッションです。障がいのある方が社内でステップアップできる制度をつくり、彼らのやりがいにつなげることが私の野望です。

 

石田さん

障がいのある方と一緒に働くことで、私たちも学ぶことができます。実習や会社見学などの依頼があれば積極的にお受けし、必要に応じて他部署の社員にも協力いただくなどしています。これからもアンテナを張って情報を入手し、障がいのある方と共に働ける環境作りに励んでいきます。周囲を巻き込みながら、一緒に成長していきたいです。

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