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障がいのある方と営業所、お互いができることをすり合わせる【多摩主管支店】

2024.01.17

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“誰一人取り残さない”社会の実現を目指して、各主管支店の人事・総務担当を中心に障がい者雇用の推進と、誰もが活躍できる職場づくりを進めています。

 

今回紹介する多摩主管支店では、特別支援学校の生徒さんの実習期間中に、人事担当が同僚社員の話を聞くなどの取り組みを行っています


多摩主管支店の菅谷さん、勝沢さん、白土さんにお話を聞きました。

 

人事・総務担当 
アシスタントマネージャー 
障害者職業生活相談員

菅谷 圭介さん

人事・総務担当 
アシスタントマネージャー

勝沢 聡子さん

府中営業所 副所長
※2023年3月まで人事・総務担当に所属し障がい者雇用を推進

白土 美樹子さん

障がい者雇用へのハードルを下げる

多摩主管支店管下で、障がいのある社員の採用経験がある所長は10名程。未経験の所長の多くが、障がいのある方と一緒に働くイメージがつかず、「障がいのある方にどんな仕事を任せていいか分からない」「どう接したらいいか分からない」と不安を感じていました。

 

業務改善会議で所長の経験を共有

そこで多摩主管支店では、未経験の所長にイメージを持ってもらうため、昨年5月の業務改善会議の中で、障がいのある社員が働いている営業所の所長の話を聞く機会を設けました。そこでは、人事・総務担当マネージャーが所長にインタビューする形で「どんな仕事を任せているか」「どのようなサポートをしているか」を話してもらいました。

例えば、ある所長は下記の内容を共有しました。

私の営業所では、障がいのあるAさんに、発送作業時のコールドボックスの充電・予冷を任せています。Aさんにこの業務を任せたことで、発送作業がスムーズに進むようになり、同僚がAさんを頼りにするようになりました。Aさんは責任ある仕事にやりがいを感じてくれています。

 

Aさんとは、「担当業務が終わったら必ず所長に声をかける」という決まりを作りました。障がいのある社員の中には、1つの仕事が終わると次に何をしてよいか分からず、立ち往生してしまう人もいます。予め「業務が終わったら所長に声をかける」というルールにしておくことで、Aさんが戸惑ったり手空きになることなく、すぐ次の仕事に取り掛かれるように工夫しています。

「私の営業所でも採用を進めたい」と声が上がるように

会議で所長の経験を共有したことで、未経験の所長が障がい者雇用に対して感じていたハードルが下がり始めました。「私の営業所でも積極的に採用を進めたい。特別支援学校の生徒さんが職場実習に来る際には、私の営業所を候補に入れてほしい」という積極的な声が上がっています

 

実習中のヒアリングと対応で、入社後の土台づくり

特別支援学校の生徒さんは、就職することを見据えて数回の職場実習に参加します。そのため多摩主管支店の人事担当は、学校から実習の依頼を受けると、生徒さんの住所や職場の体制などを考慮して将来の就業先にできる可能性が高い営業所を選び、所長と二人三脚で実習を準備、実施します。

 

人事担当が特に力を入れているのは、1~2週間の実習期間中、こまめに営業所を訪問し、一緒に働いている社員にヒアリングをすることです

 

実習期間中に現場の懸念点を把握して対応

人事担当は営業所に着くと、生徒さんに業務を教えながら一緒に働いているGOPや作業リーダー、副所長などに話を聞いていきます。立ち話をしながら、フランクに「実際、Bさんと一緒に働いてみてどうですか?」「何か困ってることありますか?」などと質問し、本音を聞き出します。特に、同僚社員からの「正直、〇〇ができなくて困りますね」といったネガティブな意見をしっかりとすくい上げます。所長の話を聞くだけでなく、生徒さんと長時間一緒に働いている社員の生の声を拾い、面談のようなあらたまった場では出にくい社員の「本音」を探ります。

 

なぜなら、実習期間中に何らかの問題や困りごとが起きている場合、それを見過ごさないことが重要だからです。菅谷さんは「これは私の苦い体験に基づいています。以前、ある営業所で、生徒さんが問題行動を起こすようになり、実習期間の後半で中止せざるを得なくなりました。後から皆で『何が原因だったのだろう』と振り返ったところ、生徒さんも同僚社員も困りごとを抱えながら実習を進めていたことに気づきました。もし早く気づいて対処してあげていたら、実習をリタイアさせずに済んだのに。この反省から、実習期間中にこまめに同僚社員の話を聞く取り組みを始めました」と話します。

 

人事担当は社員に話を聞き、その場で一緒に解決策を考えたり、必要に応じて所長・特別支援学校の先生・生徒さんの保護者などに共有します生徒さんへのサポートが必要な場合は皆でその方法を模索し、実践します。もし「営業所で採用するには、現状では生徒さんにはこの部分が不足している」という点があれば伝え、ご本人や先生、保護者にお願いしたいことと、ヤマト側でサポートできることを整理します。

 

 

同僚社員の率直な声を生かす

例えば、人事担当がある営業所で生徒Cさんの同僚社員に話を聞くと、「Cさんはぼーっとしている時間が長くて困る」という声が上がりました。そこで人事担当はその社員に、「Cさんは次に何をすればいいかわからず困っているのかもしれないから、こちらから声をかけてあげてみては?」とアドバイス。社員が積極的に声を掛けるようにしたところ、徐々にCさんからも「何かできることはありませんか」と自発的に声を上げてくれるようになりました。

 

また別の営業所では、副所長から「Dさんはあいさつをしない」との声が。人事担当の目の前で、Dさんが社員に質問をする際に社員を手招きして呼ぶ姿も見られました。人事担当は、生徒さんと先生・保護者との面談の際にこの内容を伝え、Dさんは次回の実習までにマナーを身に着ける練習をすることになりました。Dさんは、2度目の実習ではあいさつなどができるようになり、職場にうまく馴染むことができました。

 

 

生徒さんと職場、両者ができることをすり合わせ

実習中に生じている問題を可視化し、適切に対応することで、生徒さんが充実した実習期間を過ごせるだけでなく、入社後にいきいきと働き続けるための土台づくりができる」と菅谷さんたちは考えています。

 

生徒さん、先生、保護者は、入社後に職場に適応するために改善が必要なことがあれば知ることができ、練習することができます。一方、所長や同僚社員は、その生徒さんと一緒に働くために何が必要かを考えて準備することができ、その実践を通じて障がいのある人への理解を深めたり、手助けする方法を学んだりしながら、「サポートしながら一緒に働こう」という意識を高めることができます。

「実習を経て課題を明らかにし、両者ができることをすり合わせていくことで、障がいのある人がいきいきと働ける職場環境が生まれます。どちらかが無理し過ぎては長続きしないので、『この生徒さんは営業所で働くのは難しいだろう』という判断も時には必要になるかと思います。いずれにしても、実習期間中に懸念点があれば明らかにして対応するというプロセスを大事にし、実践しています。取り組みを始めて半年ほどのため、まだ実例はありませんが、入社後の定着率向上にもつながると考えています」と勝沢さんは語りました。

 

 

クローズアップ社員!

特別支援学校時代にロジスティクスコースに所属し、授業の一環でヤマト運輸の海外引越用資材の梱包などを行っていた仲二見さん。現在は、稲城営業所で発送作業を担当しています。

仲二見 勇人さん

入社年:2021年

障がい種別:知的障がい


「皆が忙しい時に助けられるようになりたいと思い、フォークリフトの免許を取りました。所長に教わりながら、フォークリフトで荷下ろしする練習をしています。一人でできるように頑張ります!」

稲城営業所 所長

菊池 正行さん


「稲城営業所は8月が梨の出荷で繁忙期ですが、仲二見さんがSDとコミュニケーションを取りながら手際よく動いてくれて助かりました。頼まれたことは最後まできちんとやろうという真面目な姿勢が、人として素晴らしいです。とても頼りにしています」

今後の展望

人事・総務担当
菅谷さん、勝沢さん、白土さんより

昨年から業務改善会議での共有や実習中のヒアリングなどを始めたことで、障がい者雇用に前向きに取り組む営業所が増えたように思います。今後も取り組みを継続し、障がいのある社員にとっても、一緒に働く社員にとっても、働きやすくやりがいのある職場づくりを続けていきます。

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