長尾社長と日本郵便千田社長が対談
2024.02.01
本記事は2023年12月26日、日本郵便株式会社(以降、日本郵便)本社にて、日本郵便さまの社員向け「社長通信」企画にて行われた日本郵便千田社長と長尾社長の対談をもとに、再編集したものです。
2月1日より、新しい投函サービス「クロネコゆうメール」の発売を開始します。昨年10月より発売開始した「クロネコゆうパケット」同様に、営業・販売はヤマト運輸で行いますが、配達や投函業務は日本郵便さまに委託します。これまでは、自社ネットワークでサービスを展開してきましたが、このような協業に至った経緯や今後の業界に対する思いを両社の社長が対談で語りました。
協業について
- 千田社長
本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございます。まずは2023年に協業へと至った経緯を振り返りながら、長尾社長からご覧になった日本郵便の印象をお聞かせいただけますか。
- 長尾社長
昨年6月の記者発表でもお話ししましたが、ヤマト運輸の得意領域は宅配です。ヤマト運輸はポスト投函サービスを開始して以来、サービスに優れている日本郵便さまのノウハウを取り入れ、現場にとって負荷の少ないオペレーションを考えてきました。しかしながら、御社ほどの物量があるわけではなく、宅配ほどの密度もありません。
マクロの視点でみると、日本社会はこれから人口が減り、労働人口も先細りしていきます。一方、eコマース市場は拡大しており、このままサービスを続けるだけのニーズはあります。
- 千田社長
ありがとうございます。協業について、当初、当社では現場から不安の声が上がっていました。協業すれば、ゆうパケット・ゆうメールが増えるため「オペレーションは本当に大丈夫なのか。当社に利益はあるのか」といった、経営への不信感が漂っていました。そのため、私としては「現場に問題の丸投げは一切しない」という決意のもと、絶対に失敗を起こさないよう本社で責任をもって実行するとともに、とりわけコミュニケーションを密に取ることを大切にしながら取り組んでいます。
本社同士はもちろん、現場間でも予行演習もさせていただくなど、何度もコミュニケーションを取らせていただき、非常にスムーズに協業を始めることができました。
- 長尾社長
おっしゃるとおり、何をいつまでに実施していくか、具体的かつ密なコミュニケーションを取りながら進めることができたと感じます。それは、千田社長をはじめ、経営層の皆さんが非常に前向きにコミュニケーションをリードしてくださったことが、一番大きかったと感じています。
当社は、協業にあたり「品質の高いオペレーションを実行している方々へお任せしたい」という気持ちがありました。それだけに、「一番安心してお任せできる相手」である日本郵便さまへポスト投函オペレーションをお願いできることは、社員からもとてもポジティブに受け止められています。
移行に向けてやるべきことはたくさんありますが、より良い形に変えていくことを楽しみにしながら、取り組ませていただいています。
今後の郵便・物流業界について
- 千田社長
ありがとうございます。ただ、当社でも様々な分野で改革してはいるものの、「まだまだ」というのが正直なところです。当社は、バイクを中心とした配送網を一生懸命磨いてきたことは事実です。その一方で、公平にサービスを提供する意識やコストコントロールの意識はあるものの、「競争する」という意識や「お客さまに選んでいただく」という感覚がまだまだ乏しいのが実態です。たとえば、これまでは我々のサービスと他社のサービスとの比較もできておらず、NPS®という言葉すら浸透していませんでした。
とはいえ、御社と協業させていただくことで、御社の「お客さまに選んでいただく」という精神やスキルを勉強させていただき、色々な分野で協力させていただければと考えています。
- 長尾社長
よく「良いサービス」といいますが、当社は「良いサービスとは何なのかについて定量的に測れるものが何かないか」と考え、5〜6年前からNPS®に注目してきました。当社は相対的にはNPS®のスコアが良いように見えますが、お客さまの反応は厳しく、私としては決して良いスコアだとは思っていません。地域ごとの評価に大きな差がありますし、前年度と比べると増減もあります。さらに、その原因が一体何なのかについて分析する余地がまだまだあります。
お客さまのニーズや環境はどんどん変化しているので「良いサービスとは何か」という解を持つことは、容易ではありません。だからこそ、御社が郵便の領域で構築されてきたオペレーションは素晴らしいものであり、我々も学んでいく必要があると思っています。また、近年では社外から様々なバックグラウンドを持つ人材を受け入れ、当社のサービスをどう変革をしていくべきか、について意見をいただき、取り入れています。さらに、人材だけでなく、テクノロジーを活用した改善も検討が必要だと思っていますので、専門の方々からご意見をいただいています。
これらは、お客さまサービスの品質向上につながり、競争の部分にもプラスに働くと思います。しかし、
私は、「トラックで荷物を運んでいる人、バイクで運んでいる人、仕分け作業をしている人など、物流に携わっている人々のステータスをもっと上げていくべきだ」と考えています。たとえば、飛行機を操縦する方々はパイロットと言われて高いステータスをお持ちですが、飛行機もトラックもバイクも一緒ではないでしょうか。特にラストワンマイルを担っている方々は、日々、細心の注意を払いながら、お客さまのことを考えてサービスを提供しています。社会に欠かせないとても大切な仕事であり、難易度も高い仕事です。そのような仕事に見合ったステータスや報酬が必要だと思っており、早く実現したいと思っています。
- 千田社長
お話を伺って、長尾社長と一緒に物流業界で働く人のステータスをぜひとも上げていきたいと思いました。当社の福利厚生は充実していますが、給料や処遇は他業界に比べて良いとは言えません。これは、会社として、社員のモチベーションやステータスを上げる取り組みが甘かったからだと思います。会社の競争力とは社員の力であり、経営陣としてここに一番力をいれなければならないと思っています。

日本郵便千田社長からヤマトグループ社員へのメッセージ
郵便事業は我々として頑張ってきた分野ですので、皆さんに、評価していただき、たいへん光栄です。他方、NPS®を含めて御社がずいぶん先を進まれ、サービスもマインドも学ぶべきところがたくさんあると思っています。御社を目標にし、互いにリスペクトし合う気持ちを大切にしながら、一緒にお仕事させていただければと思います。
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