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1か月にわたる「大パンク」を引き起こした竹原さんが失敗の中から導き出した、数値に基づくマネジメント

2021.10.29

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ヤマトで活躍されているリーダーにかつての自身の失敗談を語っていただく企画「マネジメントの失敗に学ぶ」。

 

今回お話を聞いたのは、東京港主管支店長竹原夏愛さん

 

お客さま評価で2年連続1位を誇る東京港主管支店の支店長は、どんな「マネジメントの失敗」を経験してきたのでしょうか…?

 

東京港主管支店長・竹原夏愛

アルバイトをしていた際に、「ありがとう」と言われる仕事がしたいと感じたことから、2003年SDとしてヤマト運輸入社。

 

2007年に西早稲田宅急便センター長、2010年に銀座支店副支店長に就任。中央区のブロック長、東東京主管支店のセンター経営推進課長、東京支社の副支社長を経て、2018年より現職。

竹原さんの失敗は“全部自分でやってしまったこと”。部下からは「ついていけない」と言われた

インタビュアー

竹原さんが主管支店長としてご活躍されている、東京港主管支店なんですが、お客さま評価で2年連続1位だと伺いました…!

やはり竹原さんの手腕によるものなのでしょうか…?

竹原さん

いやいやいや、それは第一線で働いてくれているメンバーのおかげです!

本当に現場のメンバーには感謝しかないですね。

竹原さんの笑顔から、取材が始まりました!

インタビュアー

それだけ他の主管にはない工夫や取り組みをされていると思うのですが…

竹原さんが初めて「マネジメントの失敗」を経験されたのはいつ頃だったのでしょうか…?

竹原さん

センター長時代ですかね。

インタビュアー

入社4年目の頃ですね。

どのようなマネジメントをされたのでしょう…?

竹原さん

いやもう、マネジメントって言えるようなレベルじゃなかったですあの時は…(笑)。

思わず手を振る竹原さん

竹原さん

“女性のセンター長”だからといってあなどられないように必死になっていました…

集配業務と管理業務の両方を一人でこなして、「この人には勝てない」というポジションを確立しようとしてましたね…

インタビュアー

なるほど、当時は女性の管理職やリーダーも少なかったでしょうからね…

それはどんな失敗につながったのでしょうか?

竹原さん

全部ひとりでやってしまった結果、センター員たちは仕事を覚えることができなかったんです…

そればかりか、「ついていけない」とセンター員たちの心が離れていきましたね…

インタビュアー

それが竹原さんの失敗だったんですね…

竹原さん

しかも当時は「なんでみんなやってくれないの!?」と思っていたんです…

この時の失敗に気づけず、センター員の成長を支援できなかったことは、今でも悔いが残ります

失敗って、いつも後から気づくんですよね…

一人ひとりと向き合うため、直筆の手紙を送る!?… 竹原さんの部下に対する向き合い方とは

インタビュアー

問題を解消できないまま、異動になってしまったわけですか…

竹原さん

そうですね。

ただ、マネジメントする立場として大きく成長させてもらったのが、その異動先でした。

インタビュアー

副支店長・支店長を経験された頃ですね。

その支店はどんなところだったんでしょうか…?

竹原さん

女性登用を積極的に行っていた支店でした。

でもその説明が不十分で、もといたメンバーの中で不信感が大きくなっていたんです…

インタビュアー

女性マネージャーに対する不信感ですか。

竹原さん

そうです、新しい人や新しい取り組みに対する大きな抵抗感があったんです。

社員たちの会話は愚痴会社への批判ばかりになってしまっていましたね…

インタビュアー

それは難しい環境ですね…

その雰囲気の中でどのように信頼を育んでいったのでしょうか?

竹原さん

一人ひとりに向き合うことを決意しました。

とにかく毎日時間をとって、一人ひとりに話を聞いて…。

不満や不安の原因を聞き出し、解決できるものはすぐに解決しようとしたんです。

インタビュアー

それで、実際雰囲気は良くなったんでしょうか?

竹原さん

それが、なかなか雰囲気が改善しなかったんですよ…

不満を解決しようとしても、ただの御用聞き、便利屋になってしまって…

インタビュアー

なるほど。苦労されたわけですね…

竹原さん

そんな時、地域の綱引き大会に支店として参加することになったんです。

当時、100人ほどいた部下のうち、実際に参加してくれたのは10人弱

「それでも参加してくれた社員の心を何とか掴みたい」と思って、一人ひとりにお礼の手紙を書いて渡したんです。

すると後日、参加メンバーのうちの一人が「…まあ、結構楽しかった」って言ってくれたんですよ…!

職場の雰囲気が大きく変わっていく手応えを感じた瞬間でしたね。

一人ひとりに向き合って、話を聞いて、手紙を書いて、ようやく努力が実を結んだ瞬間。これは相当嬉しかったご様子!

マネジメントの失敗が引き起こした“大パンク”。そこから学んだのは、「肌感覚」で判断しないこと

インタビュアー

それでは、マネジメントは順調だったのでしょうか?

竹原さん

いいえ、ここで大事件が起こるんです…!

インタビュアー

大事件!?

竹原さん

はい、近くに大きな複合施設がオープンしたとき、荷物が多すぎて集配しきれなくなったんです。

事態が収束するまで1ヶ月もかかってしまう「大パンク」でした…

メンバーにもお客さまにも、ご迷惑をおかけしてしまいましたね…

喜びから一転…かなり落ち込んだご様子…

インタビュアー

それは大事件ですね…

「大パンク」はなぜ起こってしまったんですか?

竹原さん

経験で培ってきた自分の「肌感覚」を根拠に荷量を判断していたからですね。

インタビュアー

「肌感覚」で判断したことが「大パンク」を引き起こしたと。

竹原さん

そうです。

「もし集配をやり切れなくても自分でやれば大丈夫だろう」という考えもありましたね。

それが「大パンク」の原因です。

インタビュアー

なるほど…

そんな状態から、どのように改善をしたのでしょうか…?

竹原さん

「このまま無知でいてはいけない」と思い、リーダーとしての勉強を始めましたね。

失敗を経験して、やるべき仕事が違うなって思ったんです。

自分で作業をするよりも、「社員をマネジメントする立場としてもっとやるべき仕事がある」って気づいたんですよ。

このまま無知でいてはいけない…

インタビュアー

勉強というのは、具体的にどういった勉強だったんでしょう?

竹原さん

数字の見方や、経営の知識を学びました。

そして、目の前の課題に対して、社訓・会社の理念に基づいているか、お客さまの立場や会社全体の視点から見るとどうなるかを考え始めたんです。

インタビュアー

社訓理念と照らし合わせる…

視野がグッと広がったわけですね。

では、どのようにすれば「大パンク」を防げたのでしょうか?

竹原さん

荷主や顧客情報を調査・分析し、どれくらいの大きさのものが、どんな頻度で、どれだけの量来るのか、数値をもとに予想して人材配置を行えば防げました。

「肌感覚」ではなく、数字に基づいた根拠が必要だったんです…!

10年前の自分には、ふざけんな!と言ってやりたい

数値を用いるのは、荷量を判断するときだけではない。“大パンク”を経て、社員とのコミュニケーションも見直した

インタビュアー

迷惑をかけてしまったメンバーに対しては、今後どのように接していこうと思われたのですか?

竹原さん

部下を評価するためにも、成果を数値で追うようにしようと思うようになりました。

今までのように、部下の不満を聞いて改善するだけでは、誰が何をどのくらいできるのか把握できません。

人のいいところを伸ばし、成果に繋げるのがマネジメントだと思っていたのですが、それも「肌感覚」で行っていたんです…

インタビュアー

部下に対しても「肌感覚」ではなく数値で成果を追う必要があったと…

竹原さん

そうなんです。

まずは普段から、部下を信頼・尊重し、具体的な目標をたてて業務を任せます

その結果に基づいて評価することで、誰がどんなことを、どれくらいできるのか把握することができるんです…!

そしてそれが、一人ひとりの成長にもつながります。

インタビュアー

ただメンバーの不満を解決するだけでなく、一人ひとりの目標設定を手伝い、そのメンバーは何ができるのかを数字で追う

そういう向き合い方によって、メンバーが成長していくわけですね…!

竹原さん

そうなんです。

実は、自分が主管支店長を目指したのも、支店長時代の部下の言葉がきっかけなんです…

インタビュアー

真摯に向き合った部下の言葉

どんな言葉だったのでしょうか…?

竹原さん

「支店長を目指して頑張ろう、一緒に成長しよう」と話した時に、「俺らに上の立場を目指せって言うけど、支店長は上の役職を目指さないんですか」と言われたんです。

インタビュアー

そんな言葉をもらって、どう思われたんですか?

竹原さん

もうハッとしましたね…(笑)

組織が良くなっていくためには、そこに所属する一人ひとりが成長していくことが必要です。

そのためには、自分も成長、チャレンジしていかないといけないんだなと…!

インタビュアー

互いに成長できる関係が生まれていたんですね…!

竹原さん

そうですね。働く場所や立場が変わっても、これまでの仲間たちが見守ってくれていると思うと、背筋が伸びます!

最後は、竹原さんの優しい微笑みで締めくくられました。ありがとうございました!

 

 

「肌感覚」に頼らず、数値を用いて課題に向き合うことで、大事件を防げたりメンバーの成長につながったりするのかもしれません…!

 

ちなみに竹原さん、取材中は笑顔を見せたり、時に真剣な表情でお話しされたり、マネジメントに真摯に向き合っている様子がひしひしと伝わってきました…!

 

これからも、竹原さんと関わる方々が、竹原さんと一緒に成長していくことを楽しみにしております!

 

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