【マネジメントの失敗に学ぶ】「未来につながる失敗」と「絶対に起こしてはいけない失敗」
2021.07.30
リーダーに自身の経験談を語っていただきます。
本日お話いただくのは・・・

執行役員(中国・四国地域担当)
小林 秀朝さん
1982年ヤマト運輸入社。岡山引越営業所や呉引越営業所などの営業所長、中国ヤマトホームサービス(株)取締役社長、東北ヤマトホームコンビニエンス(株)代表取締役社長などを経て、2013年にヤマトホームコンビニエンス(株)取締役常務執行役員、2017年にヤマト運輸(株)北信越支社長などを歴任し、2021年4月から現職。
失敗の種類とは
まずはじめに、私は、失敗の種類には2種類あると考えています。「未来につながる失敗」と「絶対に起こしてはいけない失敗」です。まずは、私が経験した「未来につながる失敗」からお話しします。
未来につながる失敗
周りとの連携なしに成果は出せない
22歳ごろ、初めて宅急便の営業所長としてマネジメントする立場になりました。部下は年上の人やベテランの人ばかりだったので、仕事のできることを見せるために、ただ指示するのではなく、何事にもまずは自分が率先してチャレンジするようにしていました。「最後は自分が何とかすれば大丈夫」と決めて、自分一人で事を進めることが多かったです。
しかし、26歳で、引越業務の担当に変わるとそれではうまくいかないことに気づきました。見積もり、作業、運転、アフターケアまで、チームで一つの仕事にあたる引越は連携プレーが必要で、周りの社員一人ひとりを頼りにしないとうまくいきません。そこで初めて「チームで動く重要性」を学び、周りに頼りながらのマネジメントを心がけるようになりました。
社員が主体性を発揮できる場を提供する
しかしその後、主管支店長やグループ企業の社長や支社長などさらに大きな組織でのマネジメントを行うようになると、プレッシャーにのまれ、再び「自分がやらなければ」という気持ちが強くなってしまって失敗することがありました。
そんな中で、失敗そのものに対して考え方が変わる出来事がありました。北海道支社の支社長に就任した際の出来事です。北海道支社のソリューション営業チームに、地域の生活支援に特化した取り組みを行っているマネージャーがいました。なかなか成果が出ない中、彼は諦めることなく、1年間チャレンジを継続。最終的には収益が上がらず頓挫してしまったのですが、彼のアクションは、のちに他の地域の取り組みのヒントになり、失敗を恐れないチャレンジ精神が周囲の風土にも良い影響を与えたと思っています。
私は彼のチャレンジする姿勢に感動し、大阪のある企業の取り組みにならって、「大失敗賞」を贈りました。組織の長として私がなすべきことは、失敗をおそれるのではなく、彼らが積極的にチャレンジしていける風土をつくることだと考えるきっかけになりました。
一人ひとりと向き合い、魅力を最大限に引き出す
失敗を恐れずにチャレンジできる環境を作る上で大切なのは、社員一人ひとりとしっかり向き合うこと。「SD」や「ゲストオペレーター」と職種ごとに見るのではなく、一個人として見てみると、みんなそれぞれいいところを持っています。それをどうすれば最大限に生かすことができるのかを考えていくことが、マネジメントでは重要なのです。
上長が「こうやろうぜ」と指示するだけでは、社員は言われたことに従うだけで、なかなか成果にはつながりません。「どうしたい?」と一人ひとりに聞いて任せたときのほうが、成果がでます。社員の力を引き出しより活躍していただくために、北信越支社の時代から行っているのが営業所での「主任制」。
これは、全SDに営業、安全、サービス、生産性、経理、人事の6つの分野どれかの主任になってもらい、自分でアイディアを出すところから全員で共有し、やりがいを感じてもらうという取り組みです。任命証も作成し、社員が少しでも表に出る機会を増やすことで、離職率低減にもつながりました。この工夫は現職の中四国地域でも広まっています。

営業主任任命の瞬間

営業主任に任命された岡山矢掛センター森定SD
誰のためにもならない失敗
熱を持った言葉でやるべきことを伝える
次に、「絶対に起こしてはいけない失敗」についての経験です。
まずは安全・品質面での失敗。北信越支社にいた際、ある社員が安全への意識が薄く、大きな交通事故が起きてしまいました。普段から、社員と一対一で面接をしたり、彼らの行動に気を配ったりすることで意識の改善を図っていましたが、全ての社員に声をかけることはできていませんでした。「事故を起こしてしまった社員に、あの時少しでも声をかけてあげられていたら…」、「もっと意識を高めるための工夫ができていたら、不幸な社員は出なかったのではないか」と、深く反省しました。私はより一層一人ひとりと向き合うことを意識するとともに、安全への意識向上のための具体的な取り組みも始めました。
その後、北信越支社では、各事業所に寄せられたクレームとお褒めの言葉を1枚の紙にまとめ、週に一回、各事業所にファックスを送ってその内容を共有するようにしました。お客さまからの応対クレームや交通クレームによって社員が直すべき部分を意識し、お褒めの言葉によって社員のモチベーションが上がる。毎日続けていた結果、クレームが激減。一方で、お褒めの声は激増し、安全や品質の向上につながりました。お客さまの声を全体で共有し、社員一人ひとりがきちんとお客さまに向き合う機会をつくることは、安全・品質の意識を高めていく上でとても重要だということに気づきました。
次に防災面での失敗。おととしに長野で大きな水害があった際、事前に荷物やトラックの救出を急ぐように指示はしたものの、そのほかの業務に関する指示と同じようにしか伝わっておらず、全員でその行動を徹底できていませんでした。その結果、約50台のトラックと約1,000個の荷物が水没。私はこのとき、「言葉の熱量が足りていなかった」とひどく後悔しました。人の命にかかわるような事態に直面したときは、マニュアルをなぞるたけではなく、その瞬間本当に大切なやるべきことを、熱を持った言葉できちんと伝える。大事な社員や家族を守るために、非常に大切なことです。
▼実際のFAXの写真






まとめ
気配りを忘れず、一人ひとりの良いところを伸ばしていく
以上の失敗を経験し、私がマネジメントにおいて大事にしているのは「社員の良い部分を見つけること」と、「一人一人への気配りを忘れないこと」です。
例えば、管下の事業所に行ったときに、社員の良いところを見つけ出して褒める。良くも悪くも、支社長という立場の者が言った言葉は、すぐに噂になります。それを自覚してからは、悪いことを発信するときにはより慎重になり、それよりも、社員の良いところをどんどん発信・共有していくようにしています。より大きい組織を任されるようになると、社員やそのご家族まで、関わる人数は多くなります。一人ひとりに向き合うのは難しいからこそ、その一人ひとりへ気配りをするという意識は忘れないようにしています。
ヤマトには約23万人の社員がいます。その一人ひとりに向き合うのは難しいことです。しかし、向き合うことをやめてしまえば個々のもつ力を伸ばしていくことはできません。役員や役職者などのリーダーの仕事は、社員一人ひとりの良さを引き出すこと。これからも、全社員が個性や能力を発揮しながらいきいきと働くことのできる環境づくりを進めていきたいと思います。
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