【マネジメントの失敗に学ぶ】社員が失敗を恐れず チャレンジできる場をつくること

リーダーに自身の失敗談を語っていただきます。

今回お話を聞いたのは…

執行役員（中国・四国地域担当）小林 秀朝さん

1982年ヤマト運輸 入社。備中高梁営業所長、岡山引越営業所長などを経て、2003年より中国ヤマトホームサービス 社長として引越サー ビスの責任者を経験。その後、ヤマト運輸で東東京主管支店長など を経て北海道支社長、ヤマトホームコンビニエンス 取締役常務執行 役員、ヤマト運輸 北信越支社長を歴任。2021年4月より現職。

周りとの連携なしに成果は出せない

22歳ごろ、初めて宅急便の営業所長としてマネジメントする立場になったのですが、部下は年上の人やベテランの人ばかりでした。

ただ指示するのではなく、何事にもまずは自分がチャレンジし、できるところを見せることを重要視していました。「最後は自分が何とかすれば大丈夫」と、自分で決めて、自分で仕事を進めることが多かったです。

しかし、26歳で、引越業務の担当に変わるとそれではうまくいかないことに気づきました。役割分担が明確な引越では、見積もりからアフターケアまで携わるメンバーが、いかにお客さまが一番望まれていることを共有し、チームで実行するかが大事で、信頼関係がないとうまくいきません。そこで初めて「チームで動く重要性」を学び、周りに頼りながらのマネジメントを心がけるようになりました。

社員が主体性を発揮できる場を提供する

しかしその後、主管支店長やグループ企業の社長や支社長などさらに大きな組織でのマネジメントを行うようになると、プレッシャーにのまれ、再び「自分がやらなければ」という気持ちが強くなってしまって失敗することもありました。

そんな中で失敗そのものに対しても考え方が変わる出来事がありました。北海道支社の支社長に就任した際の出来事です。
北海道支社のソリューション営業チームに、地域の生活支援に特化した取り組みを行っているマネージャーがいました。なかなか成果が出ない中、彼は諦めることなく、1年間チャレンジを継続。最終的には収益が上がらず頓挫してしまったのですが、彼のアクションは、のちに他の地域の取り組みのヒントになり、失敗を恐れないチャレンジ精神が周囲の風土にも良い影響を与えたと思っています。

私は彼のチャレンジする姿勢を讃えて、「大失敗賞」を贈りました。これは、大阪のある企業の取り組みを知って、取り入れたのですが、組織の長として私がなすべきことは、失敗をおそれるのではなく、彼らが積極的にチャレンジしていける風土をつくることだと考えるきっかけになりました。

一人ひとりと向き合い、魅力を最大限に引き出す

失敗を恐れずにチャレンジできる環境を作る上で大切なのは、社員一人ひとりとしっかり向き合うこと。「SD」や「ゲストオペレーター」と職種ごとに見るのではなく、一個人として見てみると、みんなそれぞれいいところを持っています。それをどうすれば最大限に生かすことができるのかを考えていくことが、マネジメントでは重要なのです。
上長が「こうやろうぜ」と指示しても、社員はやっている格好をしますが、成果は出ません。「どうしたい？」と一人ひとりに聞いて任せたときのほうが、成果がでます。

社員により活躍していただく工夫として、北信越支社の時代から営業所での「主任制」を推進しています。これは、全SDに営業、安全、サービス、生産性、経理、人事の6つの分野どれかの主任になってもらい、自分でアイディアを出すところから、全員で共有しやりがいを感じてもらうという取り組みです。任命証も作成し、社員が少しでも表に出る機会を増やすことで、離職率低減にもつながりました。この工夫は現職の中四国地域でも広まっています。

ヤマトには約23万人の社員がいます。その一人ひとりに向き合うのは難しいことです。しかし、向き合うことをやめてしまえば個々のもつ力を伸ばしていくことはできません。社員一人ひとりの良さを引き出すのが、役員や役職者などのリーダーの仕事。
これからも、皆が個性や能力を発揮しながらいきいきと働くことのできる環境づくりを進めていきたいと思います。

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